西洋医学と東洋医学を融合、個々人の痛みに向き合う診療

やなぎ整形外科・漢方クリニック
院長 柳澤道朗
https://yanagi-clinic.com/
地域医療の要を担うクリニック
青森県は黒石市に根差し、患者に日々向き合うやなぎ整形外科・漢方クリニック。整形外科の無床診療所であり、西洋医学と東洋医学の観点から主に痛みに関する薬物療法を行っている。同クリニックを率いるのは院長の柳澤道朗氏。地域に根差した医療を提供しつづけ、今回、ローカルフレンドリー賞受賞に至った。
同クリニック開業の裏には地域事情と後継者問題、そして患者への想いがあった。「私の大先輩が20年ほど前に医院を構え、整形外科を始めたのですが、ご病気で亡くなられたのです。その後、私の同期の医師が13年ほど引き継いで診療を行っていたのですが、その方も諸事情により辞められてしまった。こうして、後2年ほど、地域では総合病院以外は整形外科のクリニックがない状態に。総合病院、患者さまにとっても大きな負担だろうと考え、私が声を上げたのです。こうして、建物を改装し、整形外科を始める運びとなりました」と説明する。
同クリニックでは、西洋医学と東洋医学を組み合わせたハイブリッドな療法を主軸としている。この背景については柳澤氏のキャリアが大きく関わっている。「多くの診療に携わり、医師としてのキャリアを積む中で、漢方薬を使った際に想像以上の効果を発揮した事例を目の当たりにしてきました。そのような経験から、東洋医学に非常に感銘を受けたのです。こうして、自分自身の治療に役立てるべく、本気で学ぼうと決意しました」と話す。実際、柳澤氏は整形外科専門医としてだけでなく、日本東洋医学会の漢方専門医として認定を受けている。
また、西洋医学と東洋医学では診療の観点が異なるという。「西洋医学的な整形外科では症状のあるパーツに対して診察を行います。例えば、膝の痛みの場合、レントゲンを撮り、骨に原因があれば手術が中心となる。つまり、患者さまがどういった属性であれ、膝の現状に対して治療を施すという発想になります。一方、東洋医学は患者さま一人ひとりを全体として見る医療。同じレントゲン図でも、患者さまがどのような方かという前提まで紐解くのです。例えば、体型や年齢、その他全身状態などです。そうした全体像を見通すことで、同じ病名や症状でも処方する薬が異なることがあります」と説明する。
西洋医学に東洋医学を組み合わせること。特に整形外科の中で、東洋医学を導入することは大きな武器になると柳澤氏はいう。「痛みの治療では、年齢や体力的に鎮痛剤を使えない患者さまもいらっしゃる。そうした状況を考慮すると、東洋医学は大きな意義を発揮するのです。全身へのアプローチ、そしてコンディションの底上げ。これこそが西洋医学と東洋医学を組み合わせることの大きなメリットだと考えています」と語る。

患者に寄り添う医療のあり方を追求
地域に根差し、独自のハイブリッド療法で患者の治療や総合的なQOL向上に貢献する柳澤氏。診療にあたる上で大切にしているその信念とは。「クリニック全体、つまりスタッフ全員で患者さまを診ることが大切な理念の一つです。また、私個人としては決して諦めないことを大切にしています。整形外科は患者さまと長いお付き合いになることもあり、患者さま自身も症状が緩和されるかどうか不安なこともあるでしょう。だからこそ、私たち一同が諦めてはいけない。理論に基づき治療方針を立て、さまざまな角度から症状にアプローチする。これこそ常に大切にしている姿勢です」と話す。
さらに、患者への想いもひとしおだ。「医師側は治療の成績について、短期成績、長期成績と分類し、長期成績を重視します。つまり、治療の結果を長期間維持させるという観点です。一方、目の前の患者さまのことを思うと、安心と満足をもたらすことが医師としての役割でもあります。患者さまによっては『今よくなければ生活に困る』といったニーズも発生します。私からすると、対処療法的で長期の治療効果が見込めないというケースもありますが、患者さまにもそれぞれの生活や事情がある。こうした場合、私はコミュニケーションをした上で、患者さまのニーズを優先しています」という。患者の意思を優先し、専門医として選択肢を提案する。単方向ではなく双方向の医療を柳澤氏は実現しているといえるだろう。
独自性を確立しつつ、地域医療に貢献してきた同クリニック。今後の展望について柳澤氏は「西洋医学的な整形外科と東洋医学の融合を実践してきましたが、これをさらに体系立てたものとして磨き上げていきたいです。実際、現在進行形で東洋医学の柱の一つでもある鍼治療を学んでおり、今後第三の療法として導入することを見込んでいます。よりよいものを自分自身の診療に取り入れ、患者さまに貢献する。今後もその姿勢は崩さずにありたいです」と力を込める。柳澤氏の学び、そして挑戦はローカルフレンドリー賞の名の通り、地域の健康と安心を守ることとなるだろう。

プロフィール
北海道札幌市出身。平成4年、弘前大学医学部卒業。平成8年、弘前大学大学院医学研究科卒業。国立弘前病院、虎の門病院、弘前大学医学部付属病院等勤務を経て、令和4年9月より、やなぎ整形外科・漢方クリニックを開設。