不動産業界の常識を超えて、透明性の高いビジネスモデルを

株式会社Koa-RealEstate
代表取締役社長 川元啓司
https://koa-realestate.jp/
憧れた業界の“現実”が、改革への出発点に
常識にとらわれず挑戦を続け、未来への突破口を切り拓いてきた経営者に贈られる「チャレンジング賞」に、株式会社Koa-RealEstateの代表取締役社長・川元啓司氏が選ばれた。同社は、建物全体を購入して家賃収入を得る「一棟収益物件」に特化し、購入から管理、そして売却までを一貫してサポートする不動産会社である。川元氏は、不動産業界に根強く残る旧態依然とした慣習から脱却し、顧客の利益を最優先に考える経営を実現してきた。その原動力には、会社員時代の経験が深く関係しているという。
「もともと学生時代から“大家さん”という存在に憧れていました」と語る川元氏。大学卒業後は不動産業界に入り、大手賃貸仲介店で店長を務めたあと、デベロッパーにて課長職として用地仕入れに従事。不動産仲介会社では役員としてオフィスや店舗の仲介を統括し、さらに区分・一棟不動産の販売や資産形成コンサルティングにも携わった。加えて、大手損害保険会社での勤務経験を通じて企業財務や個人のファイナンシャルプランニングにも精通し、不動産業界のあらゆる分野を横断的に経験してきた。
順調にキャリアを重ねる一方で、川元氏は業界の慣習に次第に疑問を抱くようになる。例えば、不動産管理会社が収益不動産のオーナーに対し、必要以上に設備の修繕や交換を推奨するケースがあるという。「管理会社が自社の利益や業務効率を優先し、本来であれば修理で済む不具合でも新品への交換を提案し、高額な費用を請求する場面を何度も目にしてきました」と川元氏は振り返る。
憧れの業界の現実を知るにつれ、川元氏の情熱は少しずつ薄れていった。業績も低下し、一時は管理職を降格されるほどだった。当時、業務の一環として「顧客・オーナー向けのセミナーの登壇」があったことから、川元氏は自身の想いをぶつける形で、顧客本位の姿勢の大切さを説き続けたという。すると、その姿勢に共感する参加者が増え、新規契約の増加へとつながった。その結果、川元氏は再び管理職に復帰することができた。「セミナーで出会ったお客様とのご縁は、今も続いています。現在の当社のスタイルを形づくる大切なきっかけになりました」と川元氏は穏やかに語る。

利益を追いすぎず、信頼を積み重ねる
川元氏が会社員時代から疑問視していた「設備の修繕や交換を過剰に推奨する慣習」。これを断ち切るため、同社では「必要最低限の交換で済ませる」という方針を徹底している。取引先の工事会社からすれば、高額なマージンが得にくくなるため、売上や利益の減少を懸念する声もある。しかし、長期的な信頼関係を重視し、高品質な施工を大切にする良心的な工事会社からは、むしろ好意的に受け止められているという。
「当社の方針に共感してくださるガス会社や電力会社の方々からご紹介をいただき、新たな物件管理のご依頼を受けることが増えています。不具合が発生した際には、そのご紹介いただいた会社様に修理をお願いしています」と川元氏は語る。誠実な姿勢が、確かな信頼の輪を広げているのだ。
とはいえ、建物の状態によっては大規模な修繕が必要になることもある。その費用は通常オーナーが負担するが、想定外の高額な支出となり、手取り収益を圧迫するケースも少なくない。
そこで同社は、2025年1月から「修繕費用の積立サービス」を開始した。入居者から受け取る更新料を積み立て、高額な修繕が必要となった際に立て替える仕組みである。近年、管理会社が更新料を全額受け取るケースが増える中、同社では従来通りオーナーと管理会社で更新料を折半し、積立を代行。突発的かつ大きな支出リスクを軽減し、オーナーの安心を支えている。
現在は都心物件を中心に管理・サービス展開を行っているが、今後は地方への展開も見据えている。「東京は賃料水準が高いため、ある程度の修繕費にも対応できますが、地方は賃料が低く、人口減少の影響もあってオーナー様の負担が大きくなりがちです」と川元氏。そうした状況を踏まえ、地方都市への支社展開も視野に入れているという。
もっとも、これは単なる事業拡大ではない。「会社の規模を大きくしすぎると維持コストが増え、どうしても利益を追求せざるを得なくなります。結果として、お客様にとって最適ではない提案をしてしまう恐れがある。それでは本末転倒です。お客様に寄り添った誠実な姿勢を守るためにも、必要最小限の体制で運営してまいります」と力強く語る川元氏。その真摯な姿勢こそが、同社にとっての大きな資産であり、未来へと続く原動力となっている。

プロフィール
岐阜大学工学部土木工学科卒業。20代で大手賃貸仲介店にて店長を務め、その後不動産証券化企業にて用地仕入れ、オフィスと店舗の仲介など現場経験を積んだ後、一棟収益売買専門会社にて経験を発揮。しかし、スルガショックの影響で勤務先が倒産し、顧客の資産保守に奔走する。大手損害保険会社に在籍し、損害保険および生命保険販売を通し企業財務および個人FPのコンサル業務に従事。2023年度に独立し、現在に至る。