エンジニアの幸せを追求し、地方創生の実現へ

アイティアスリート株式会社
代表取締役 中村学
https://www.itathlete.co.jp/
躍進を支える、エンジニア想いの環境づくり
先進技術や独自の研究開発を武器に、新しいビジネスモデルや産業の進化を推進してきた経営者を讃える「テクノロジー賞」に、アイティアスリート株式会社の代表取締役・中村学氏が選ばれた。同社はネットワーク環境の構築を中心に、オフィスや工場などのITインフラの整備をトータルで支援する技術者集団だ。社内外をつなぐ通信環境の設計から、サーバーやクラウドの導入・運用までを一貫して対応。社員約40名と小規模体制でありながら、大手自動車メーカーや大手通信キャリアなどから直接案件を請け負い、各企業のDX推進と業務効率化をサポートしている点が評価された。こうした実績の土台について、中村氏は「エンジニアが幸せになれる環境づくりに注力していることが関係していると思います」と話す。
まず同社では、ネットワークエンジニアのスキルアップ支援に力を入れている。特徴的なのが、社内にラボスペースを完備していることだ。そこではICT機器やクラウドを利用できるほか、検証機器に触れて実際の動きを確かめることも可能。リアルな現場を想定しながら、検証やトレーニングに取り組める。さらに中村氏は「当社だけではどうしてもナレッジメントは限られる」とし、パートナーシップを結ぶクライアント企業の研修プログラムに参加できる体制も整えているという。
充実した福利厚生も魅力だ。「社員が健康でなければ、会社は成り立たない」と考える中村氏。健康診断だけでなく、インフルエンザワクチンやコロナワクチン、人間ドックなどにかかる費用も全額負担している。「いいもの食べよう会」というユニークな制度もある。毎月1回、社員が食べたいものを、社員全員に振る舞っており、日頃の頑張りをねぎらう機会としている。
社内の風通しも良いという。中村氏は「オフィスでは私と社員が同じフロアで仕事をしています。社員にとっては気軽に話しかけられる距離感ですし、実際にいつでも相談を受け付けています。困っていそうな社員がいればこちらから話しかけることも多いです。一人で悩みを抱え込むような心配はないと思います」と語る。そのほか社内にはボルダリング部とゴルフ部があり、社内コミュニケーションの活性化やチームワークの強化につながっているという。「小さな会社ではありますが、大手に引けを取らないような働きやすさを提供できるよう工夫を凝らしています」と中村氏は胸を張る。

地方支社の開設で、多様なニーズに対応
こうしたエンジニアファーストな職場環境は、一人ひとりのモチベーションの向上や、困難を乗り越える力につながっているという。一例として中村氏は、ある案件を担当したプロジェクトマネージャーの奮闘を挙げる。
その案件は社員1万人規模の化粧品会社における、リモートアクセス基盤の整備といった、難易度の高いプロジェクトだった。利用するメーカーの機械にバグが大量発生しており、本来達成すべきタスクに数ヶ月間まったく着手できない状況に陥った。「クライアントをどうしてもお待たせしてしまうため、プロジェクトマネージャーは正直に状況を説明しました。限られた条件の中で、別の機械で検証を何度も重ね、クライアントとも相談しつつ、解決策を見つけていく必要に迫られました」と振り返る中村氏。
そして「プロジェクトマネージャーが粘り強く交渉し、導入水準に折り合いをつけ、最終的には導入にこぎつけました。その社員の成長を間近で見守った数ヶ月間で、同じ働く仲間として誇らしかったですね」と笑みを浮かべる中村氏。
そんな中村氏は2025年、関西支社を立ち上げたが、それも社員のためだった。「地元の大阪に帰って働きたいという社員からの相談を受け、大阪に戻っても当社での仕事を続けられるよう、二つ返事で関西支社を設立しました」と涼しい顔で話す。
また中村氏は地方支社の展開のメリットは、会社側にもあると考える。「都内だけでなく、関西や九州などの企業からの依頼を打診されることもあります。その中で、その地域にはその地域ならではのコミュニケーションの文化があると感じています。クライアントの拠点のそばに支社を置くことで、よりきめ細やかなソリューションを提供できると思っています」とし、今後はさらに地方支社の開設を加速させる考えだ。
加えて地方支社の開設は、U・I・Jターン志向のエンジニアの就業先の候補にもなり得る。中村氏は「地方で働きたいというエンジニアは確実に存在していると思います。そういった方々も巻き込み、地域全体の盛り上げに一役買いたいですね」とビジョンを語る。エンジニアの求人や仕事の機会は、圧倒的に都内に集中している傾向にある。一方で地方企業のIT人材不足は深刻だ。エンジニアの多様な働き方のニーズに応えながら、地方創生にも貢献しようとする中村氏。同社の躍進は今後も続いていくだろう。

プロフィール
1981年生まれ。中高時代はゲームやパソコンに親しんでいたが、高校から始めたバンド活動にのめり込み、プロを目指して上京。IT系のアルバイトをしながら音楽活動を続けるものの、25歳でプロを断念。それまでのネットワークエンジニアとしての経験を活かし、通信キャリアや自動車メーカーのネットワーク設計・構築を経験。2014年に入社した株式会社マイクロネットワークテクノロジーズではICTインフラ部門の部長を務める。2018年にアイティアスリート株式会社を創業し、現職に至る。