伝統を守り、革新を重ね、シュタイフの魅力を広め続ける

2025.12.01

シュタイフ・ジャパン/株式会社MS1880
代表取締役社長 西本学
https://www.steiff.co.jp/

世界的ブランドで培った経営戦略

常識にとらわれず挑戦を続け、未来への突破口を切り拓いてきた経営者に贈られる「チャレンジング賞」に、シュタイフ・ジャパン/株式会社MS1880の代表取締役社長・西本学氏が選ばれた。同社は、ドイツ発の老舗高級ぬいぐるみメーカー「シュタイフ」の日本総代理店として知られる。シュタイフは世界で初めて「テディベア」を生み出したブランドであり、子どもから大人まで、世代や国境を越えて愛され続けている。その確固たるブランド力を基盤に、西本氏は外部のクリエイティビティーを積極的に取り込み、シュタイフのさらなる発展を推し進めてきた。

西本氏は長年にわたり、ブランドビジネスの最前線でキャリアを築いてきた。大学卒業後、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー グループ)に入社。パリ、ロサンゼルス、グアム、ニュージーランド、サイパンなどの海外拠点でマネージャーとしての手腕を発揮した。35歳でルイ・ヴィトン ジャパンへ異動し、帰国を果たす。

超一流ブランドの中で活躍する一方で「一つの企業にとどまるより、自身の専門性を高め続けたい」というジョブ型志向を持っていたという。その志向が高まる中で、ヘッドハンティングを受け、シャネルおよびジョルジオ アルマーニのゼネラルマネージャーを歴任。シャネル銀座ビルやアルマーニ銀座タワーの立ち上げを取り仕切るなど、着実に実績を積み重ねた。

こうした実績が評価され、2010年、スペインのラグジュアリー陶磁器ブランド「リヤドロ」の日本法人・リヤドロジャパンの代表取締役社長に就任。その後、ドイツのシュタイフ本社からの強い意向があり、西本氏は日本初となるシュタイフだけの総代理店を創立した。

50歳でこの仕事を引き受けた西本氏は「シュタイフの創業者、マルガレーテ・シュタイフ氏は、小児麻痺を患い、右手と両足が不自由で生涯を車椅子で過ごしました。しかし、左手だけでぬいぐるみを制作し、やがてシュタイフ社を創業したのです。彼女は自らの経験から、ハンディキャップを持つ人々に職を与え、亡くなったあともその理念はチャリティー活動を通じて受け継がれています。その生き方と信念に深く感銘を受け、人生の集大成としてシュタイフを選びました」。

攻め続ける姿勢が、ブランドの未来をつくる

現在、西本氏が注力しているのは「伝統と革新の融合」である。シュタイフは「子どもには最高のものこそふさわしい」という創業者の理念を今も受け継ぎ、素材選びから安全基準にいたるまで一切の妥協を許さない。熟練の職人による丁寧な縫製が、耐久性と温もりのある製品を生み出している。

その伝統を礎としながら、西本氏は日本の文化やキャラクターとのコラボレーションにも果敢に挑戦してきた。就任当時、シュタイフは圧倒的に女性層が強かったが、BMWやベンツとのコラボレーションで男性層を獲得。また、年齢層の拡大を図る為、フラグメントなどストリートブランドとのコラボレーションを実現。近年では『鬼滅の刃』の煉獄杏寿郎テディベアを発売し大きな話題となる。

こうした挑戦が高く評価される一方で「キャラクター商品に偏りすぎると、シュタイフが“キャラクター企業”と見なされてしまうのではないか」との懸念もあったという。しかし西本氏は「リオデジャネイロ・オリンピックの閉会式で、安倍晋三首相がスーパーマリオとして登場し、世界中の注目を集めましたよね。その様子を見たとき、日本のポップカルチャーが世界の象徴の一つであると再認識しました。だからこそ、私たちは日本の文化を通じてシュタイフの新しい可能性を発信していきたいのです」と話す。

シュタイフのネームバリューに甘んじず、挑戦を続ける理由として、西本氏は「過去に在籍したルイヴィトン、シャネル、アルマーニなどでの経験から、そのブランドの歴史や実績に依存した瞬間から、ブランディングが停滞することを学んできました。攻撃は最大の防御です。現状維持こそ後退だということを忘れずに、新たなチャレンジを続けていきたいと考えています」と語る。

西本氏が話す通り、歴史や実績に依存し、革新を怠れば、ブランディングは徐々に弱体化する傾向がある。過去の成功体験から抜け出せず、デザインやマーケティングが時代遅れになり、新しい顧客層から受け入れられなかったり、市場のニーズに合わせた商品を生み出せなくなったりするものである。「伝統」という強固な土台の上で、絶えず「革新」を起こすことで、ブランディングの維持・成長につなげられる。

1880年に創業したシュタイフは、2025年で145周年を迎えた。西本氏は「テディベアがかわいいというだけで、145年もブランドは続かないと思っています。創業者の哲学を守りながら、今後も現代の文化やニーズに合わせ、柔軟かつ戦略的なアプローチを仕掛けていきます」と締めくくった。

プロフィール

1963年生まれ。獨協大学在学中に学習塾を創業し、成功を収める。学生時代の語学留学経験から海外就労を志し、1991年にLVMHグループに入社。フランス、アメリカ、ニュージーランドなど海外でのマネージャー職を経て、1998年にルイヴィトン・ジャパンへ異動のため帰国。その後、シャネル、ジョルジオ アルマーニなどハイブランドでゼネラルマネージャーを務め、2010年にリヤドロ・ジャパンの社長に就任。2013年にはシュタイフ・ジャパン/株式会社MS1880(シュタイフ日本総代理店)を設立し、現在に至る。