常識を“耕し”、農業・園芸の未来をつくる

2025.12.01

リサール酵産株式会社
代表取締役社長 飯川隼斗
https://www.resahl.co.jp/

家業の危機をチャンスに変えたSNS戦略

大きな未来構想を描き、業界や社会の常識を変えるような変革を実行してきた経営者に贈られる「ビジョナリー賞」に、リサール酵産株式会社の代表取締役社長・飯川隼斗氏が選ばれた。

同社は、微生物を活用した土壌改良資材や発酵促進材など、農業・園芸資材の開発・製造・販売を行う企業である。中でも看板商品「カルスNC-R」は、手軽に質の高い土づくりができることからSNSで話題を呼び、一時はネットショップで品切れが続出するほどの大ヒット商品となった。

このヒットの立役者こそ、同社の三代目である飯川氏だ。飯川氏は大学卒業後、東証一部上場の金融機関に入社し、約2年間で幅広い金融知識を身につけた。

「家業を継ぐつもりはまったくありませんでした」と語る飯川氏だったが、祖父の逝去と父の体調不良が重なり、会社が存続の危機に瀕したことをきっかけに、2018年、父を支える形で入社を決意した。入社後、飯川氏が注力したのは、YouTubeを中心とした情報発信だった。

コロナ禍を機にSNS活用を本格化し、自社チャンネルを立ち上げるも当初は再生数が伸び悩んだ。そこで飯川氏は本当に土づくりを大切にしている人たちへ、カルスNC-Rの価値を直接伝えることに力を注いだ。

その中で出会った農業・園芸系YouTuberの方々が実際にカルスNC-Rを使い、その効果を実感。結果として企業案件ではなく、ご本人の意思とご厚意により動画内で紹介されたことをきっかけに、家庭菜園やガーデニングを楽しむ層へと口コミが広がっていった。

アメリカ市場の進出と新事業への挑戦

カルスNC-Rは土壌改良材として高い知名度と独自のポジションを確立し、同社も日本の農業・園芸分野で確かな存在感を示している。しかし、飯川氏の視線はさらに先を見据えている。次なる目標はアメリカ市場への進出だ。

「今後も着実に成長を続けるためには、日本市場だけではどうしても頭打ちになります。そのためアメリカという大きなマーケットに挑戦したいと考えています」と語る飯川氏。現在は現地市場のリサーチを進めており「海外でどのような商品が支持されているのか、当社と類似する製品がどのように展開されているのかを分析し、その結果を踏まえてパッケージデザインや使用シーンを検討していきます」と具体的な戦略を描く。ゆくゆくは効果的な広告展開を通じて、“ジャパニーズブランド”としての価値を発信し、海外市場における確固たる地位を築く考えだ。

さらに飯川氏のビジョンには、新たな事業領域も含まれている。「私は幼少期からテニスに親しみ、中学では県大会ベスト8、高校では県大会優勝・関東大会5位の成績を収めました。社会人サークルでは全国大会出場も果たしました。その経験を活かして、テニス業界に貢献したいのです」と話す。飯川氏は自社ビルの建設を目標の一つとしており、建設の際にはテニスコートを併設することで、テニス関連事業の展開を構想している。

単なる事業承継にとどまらず、常に新たな価値の創出に取り組む飯川氏。その原動力を尋ねると「刺激を求めている、という感じですかね。当社に入社するまでは、安定した会社で働いていました。しかし、家業の経営状況が厳しいと知り、“自分の力で会社を再建したい”という想いが芽生え、入社を決意しました。リスクを取れば批判やトラブルはつきものですが、その分、やりがいもあります。成功すれば結果ですし、うまくいかなければ、それは単に自分の実力が足りなかったというだけのことです」と、穏やかに語る飯川氏の言葉には、揺るぎない覚悟が感じられる。

最後に飯川氏は「目標を追うより、“基準値をどこに置くか”を意識しています。スポーツでも県1位を目指すのか、全国1位を目指すのかで日々の努力の質が変わりますよね。ビジネスも同じで、自分の中の“当たり前”を高く設定することが、イノベーションにつながると思っています」と締めくくった。その言葉通り、飯川氏の高い基準値と行動力が、同社を次のステージへと導き続けている。

プロフィール

1993年埼玉県生まれ。大学卒業後、金融機関に就職し、実務を通じて金融知識を磨いたのち、2018年3月に家業であるリサール酵産株式会社に入社。営業・マーケティングに携わり、YouTubeをはじめとしたSNS発信により、微生物資材「カルスNC-R」を全国に広めた。2025年8月、三代目代表取締役社長に就任。49年目を迎えた同社の創業50周年に向けて、新工場の稼働や次世代商品開発を進めながら「土づくりは未来づくり」を掲げ、農業・園芸業界で新たな挑戦を続けている。