世界に羽ばたく、CRMリーディングカンパニーの挑戦

2025.12.01

アーカス・ジャパン株式会社
代表取締役 松原晋啓
https://www.arcuss-japan.com/

緻密な戦略で積極的に海外へ

「この度のグローバルグロース賞受賞は、本年度から海外への本格展開を始めたため、タイミングとしても非常によく、嬉しく思います。社員を含め、社員の家族、私の家族、全員の力でいただいた賞だと考えているので、皆さまに感謝を伝えたいです」。そう語るのはアーカス・ジャパン株式会社の代表取締役、松原晋啓氏だ。同社はCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)のリーディングカンパニーとして、多くのベンダーを支えている。

ドバイ現地法人のアーカスUAE設立、ヨーロッパとの取引強化、ラオス進出に加えて、マレーシアに本社移転を検討するなど、海外展開に注力する同社。その背景にはIT企業ならではの強みが根幹にあった。「ITに国境はないのです。当社の製品は40カ国語以上に対応しており、特に英語は多くの国で通用する言語。法律や規制は現地によって異なりますが、販売の点でいえば、グローバルに進出する土壌はすでに整っていたともいえるでしょう」と松原氏は説明する。

海外の舞台でビジネスを行うためには、戦略が欠かせない。松原氏もまた巧みな戦略をもとに、着実に歩みを進めている。「ドバイにはすでに現地法人があるため、ここから中東地域で拡大していきたい。次に東南アジア、そして、いずれはアフリカへの進出も考えています。これらの国々とのつながりをもとに発展することで、欧米や日本といった先進国にアプローチがしやすくなる。『将を射んと欲すればまず馬を射よ』といった方式で、海外展開を積極的に行っていきます」という。さらに、松原氏の戦略の独自性を際立たせているのは、東南アジアの中でも特にラオスに焦点を当てている点だ。「ラオスに着目している日本企業は多くありませんが、私は大きな可能性を秘めた国と見ています。その理由は、交通の要所である点です。ラオスは中国、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムと隣接する内陸国。だからこそ、先んじてラオスで事業が確立できれば、さらなる拡大が期待できるでしょう」と話す。

革新と伝統の両輪を大切に

同社のコア事業であるCRMはアメリカ発。その有用性は世界中で通用するという確信と、顧客満足度の最大化が戦略の軸となっている。世界の国々を見据える中で、松原氏は現地でビジネスを行う際の重要な心構えに言及する。「現地には現地の言葉がそれぞれあります。私はその国に進出する際、現地の言葉をできるだけ理解できるようにしたい。その上で、重要になるのはまず文化を学ぶこと。例えば、英語を例に挙げると、日本語と対訳できない言葉やフレーズが多くあるでしょう。その理由は文化と言葉は密接に結びついており、紐づいているからです。当社では一つの国へ赴く際、現地の文化や空気をしっかりと体験することを重視しています」という。

また、他の取り組みにおいても松原氏の文化を重んじる姿勢が見て取れる。「当社では現在アイヌ民族とのコラボレーションを行っており、アイヌ語のスタンプを制作しています。また、狂言といった伝統芸能とも積極的にコラボレーションを行っています。当社はIT企業。IT業界は変化の波が激しく、最新技術が続々と登場する領域です。そのような業界にいるからこそ、私は革新のために伝統文化を捨てていいわけではないということを伝えたい。伝統は革新と密接に結びついており、極めて重要なのです。事業を進めるにあたって、私は常に温故知新の姿勢を大切にしています」と語る。

革新と伝統を重んじ、海外と日本国内にも視座を置く同社。松原氏が描く今後の展望とは。「どの国においてもCRMを浸透させること。これが当社の重要な理念です。とはいえ、効果を最大限発揮するためには、CRMそのものだけではなく、適切な使い方を普及させなければいけません。そのため、実際当社では『アーカスアカデミー』というトレーニングサービスを展開しています。段階的、かつ幅広く学べる体系的なコースとなっており、実践的にCRMを活用できる人材育成に注力していきたいです」という。

さらに、「CRMはいわば企業の頭脳といっても過言ではありません。管理システムやメール、チャットなど、体を構築するツールは山ほどありますが、コアを握るCRMは浸透していないのが現状。国内外問わず、企業成長のために頭脳たるCRMを使いこなせる人々が増えること。そして、そのような世界が実現することを目指していきたいです」と力を込める。グローバルグロース賞の名の通り、海外に事業の幅を積極的に広げる同社。今後も確たる信念と戦略のもと、松原氏は躍進しつづける。

プロフィール

アクセンチュア株式会社等でアーキテクトやコンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for CRM)、MicrosoftでCRM製品担当を経て、CRM専門企業アーカス・ジャパン株式会社を設立し、企業のCRM導入・定着化を支援。インタビューや記事寄稿を通じて真なるCRMの普及に努めている。