「虹を奏でる」理念が、業界に光を灯す

株式会社タミヤホーム
代表取締役社長 田宮明彦
https://www.tamiya-home.com/
営業社員の約90%がアスリート経験者
次世代を担う人材・リーダーを育み、未来の産業を切り拓いてきた経営者に贈られる「ネクストヒーロー賞」に、株式会社タミヤホームの代表取締役社長・田宮明彦氏が選ばれた。同社は埼玉県所沢市に本社を置く、解体工事をメインとする建設会社だ。一般的な解体工事業者と異なるのは、アスリートのセカンドキャリア・デュアルキャリア採用に注力している点である。サッカーや柔道、ボクシング、野球、ラグビー、ラクロス、陸上、総合格闘技といった幅広い競技出身者を採用しており、営業社員の約90%がアスリート経験者で構成されているという。
こうした採用方針に舵を切ったきっかけは、田宮氏自身の経験にある。「2020年に長男が生まれ、2021年に次男が生まれました。第二子妊娠中、妻が切迫早産で緊急入院し、私はいわゆるワンオペ育児をすることに。そんな中、元サッカー選手の社員が、私の家までオムツを運んでくれたり、食品や日用品を届けてくれたりしたのです。とても助かったので『ありがとうね』と伝えたところ、『当たり前です』という言葉が返ってきました。その瞬間に人としての在り方に大きな感動を覚えました」と田宮氏は振り返る。
その社員の行動を機に、アスリートが持つスポーツマンシップは社会の力になると思い、アスリートのセカンドキャリア・デュアルキャリア支援の意義を強く感じ、本格的な採用活動に踏み切ったという。田宮氏は「選手として活動していた方々にとって、30代で社会人1年生として再スタートを切ることは大きなハードルであり、同時に社会的課題であると考えています。アスリートに恩を感じて、積極的に採用活動を進めてまいりました。当時は社会経験の少ない社員が多くを占めていましたが、入社後2〜3年で、彼らは競技で培ったPDCAサイクルを通じて急速に成長しています。その結果、社員の成長と会社の売上規模・成長の速度が比例し、アスリートのキャリア支援と会社の成長が相互に好影響を与えていると考えています」と語る。最近では“アスリートを採用している会社”というイメージが定着しつつあり、新卒採用やリファラル採用も増えているという。

アスリートの力で、業界の未来を変える
同社に入社したアスリート経験者は、基本的に営業職への配属となる。解体工事の依頼をする顧客が最初に接する窓口だ。「お客様と会話する中で、営業職であるアスリート経験者が会話の糸口として『野球選手だったんですよ』などと話すと、大半のお客様は驚きとうれしさが同時に浮かんだようなリアクションをされます」と田宮氏は現場の様子を語る。
その効果として期待しているのが、解体工事業のネガティブなイメージの払拭だ。「解体工事業者は一般的に『怖い』『近寄りがたい』といった印象を抱かれがちです。一方でアスリートの世間的イメージはそれとは大きく異なり、ポジティブで、憧れの対象として見られることも多いですよね。アスリート経験者の採用を通じて、業界のマイナスイメージを少しずつ良い方向へ変えられるのではないかと考えています。アスリートは業界に光を灯す存在だと思います」と田宮氏は語る。
また田宮氏は、過去に大病から奇跡的に復帰した経験を持つ。「死んでもおかしくない状況から復帰した自分にとって、今の人生は『ここにいていいんだよ』と言われて生かされているような感覚があります。ある意味、セカンドキャリアとも言えるかもしれません。一度立ち止まった場所からもう一度歩き出すという共通点を、アスリート経験者の方々に感じています」と話す。
アスリート経験者の可能性とパワーを信じ、働く仲間として迎え入れ、共に成長を続ける田宮氏。その視線は、解体工事業と切り離せない空き家問題の解決にも向けられている。「日本では空き家の増加が深刻化しており、防犯面の低下や景観の悪化など、地域社会にさまざまな課題をもたらしています。本来であれば誰かが率先して取り組むべき重要なテーマでありながら、実際には担い手がほとんどいないのが現状です。このような状況の中で、当社がまず率先して一歩を踏み出し、先頭に立つ姿勢を示すことが必要だと考えています。誰も背中を見せていないのであれば、私たちが背中を見せる側になっていけばいいと思っています」と力強く語る田宮氏。同社の今後のさらなる飛躍を期待したい。

プロフィール
1982年生まれ。2005年、大学卒業後、不動産建設系企業(大手上場企業グループ)に入社。2017年、都内不動産建設系企業の代表取締役に就任。2020年2月、有限会社タミヤホームの代表取締役に就任。過去、不動産建設系企業では史上最年少で支店長に昇格。その後も、数々の社内表彰を受賞する。計16年に渡って不動産業界で経験を積み、その間、名刺交換した数は5,000枚に及ぶ。2019年、父が経営するタミヤホームの株式譲渡を受け、翌年の2020年2月に代表取締役に就任。